レコードをめぐる冒険 (Pure Desmond/Paul Desmond)
今月はできるだけレコード屋さんに近づかないでおこうなどと思ったもののやはり足は向いてしまいます。新宿近辺に用事があると必ず立ち寄るあのショップでポール・デスモンドの名盤を見つけ躊躇なく購入しました。ランクAで盤質も良好。ちょっとチリッと聞こえる箇所もありますが問題なしです。このアルバムは74年CTIからリリースされたポールの晩年の作品でスタンダード曲を集めたアルバムです。
何度も聞いていますが嘘偽りなく夏の終わりの疲れた心と体を癒してくれる名盤だと思います。曲目は...
Side 1
Squuze Me
I'm Okd Fashioned
Nuages
Why Shouldn't I
Side 2
Everything I love
Warm valley
Till The Clouds Roll By
Mean To Me
いつ見ても渋い風情のデスモンドさんであります。
アルバム全体にわたりリラックスした雰囲気にあふれリズムも心地よく、なるほどベースはロン・カーター、ドラムはコニー・ケイトと磐石な布陣であります。ギターには初顔合わせのカナダ人ギタリスト、エド・ビッカードが起用されています。ポールですがジム・ホールとの長きにわたる相性抜群の名演の印象が強くエドとはどうなんだろうかと...
音的にはジムのウォーミーでこもったような音色と違い乾いた所謂ギターらしい音色(ソリッドタイプのギターを使用しています)に感じます。またよく言われる卓越したコードワークですがちょっとテクニカルなところはわかりませんがポールとの相性がすごく良いのにちょっと驚きました。
Side Aの3曲目のNuagesはジャンゴ・ラインハルトの1942年の作品で彼の最高傑作とも言われている作品です。やはりギターがはえる曲なのでしょうかエドのソロのパートでのロン・カーターとの相性も素晴らしく和音の響きがいい感じでぞくっとさせます。 そのあとに続くポールのソロは手短でありながらバックではエドが囁くようにポールを引き立てています。この曲だけでも価値があるとすら思える名演です。
当時、新たなクァルテットを編成すべく考えていたポールにジムの強力な推薦もあり起用されたと言われています。ポール自身もかなり気に入ったらしく当時、ブルー・ベックカルテット以来の長い間封印していたクラブでの2週間に及ぶ演奏も行ったようです。アルバムでも意外と前面に出てきていますがそのスタイル、ジムと同様、やたらに前に出てくることはなく卓越したテクニックに裏付けされたながらも決して嫌味でないスタイルでかっこいいですね。このアルバムは実質エドのアルバム("I conisder it Ed's album, really")だとポールが語るようにエドの魅力を伝えるためにポールがお膳立てしたようなアルバムにも思えてきます。
カナダではかなり売れっ子のスタジオミュージシャンであったようですが現在、彼名義で入手できる音源はあまりないようですがApple Musicには結構あるようです。恐るべしですがとりあえずひと通り聞いておきたいアーティストであります。
ポールですがこのアルバムの3年後、51歳の若さで他界してしまうのですが、このクァルテットの作品、つまりはデスモンド=ビッカートをもっと残して欲しかったと思いながら過ぎ行く夏に... いやいやまた暑くなってきましたが... 思いを巡らしています。