レコードをめぐる冒険 (Pithecanthropus Erectus/Charles Mingus Jazz Workshop)
こんにちはYamataiです。
8月最後となりました。
夏の終わりに相応しい曲とも思いましたがなんとなく感傷に浸っている感じでもないので最近、購入して日に3回は聴いているレコード紹介します。Pure Desmondを買った時に一緒にディスクユニオンで発見、盤質はAでジャケットはやや黄ばんでいますが音質はクリアです。推測ですがあまり聞かれなかったのかもしれません。噂通り難解です。チャールズ・ミンガス、ベースプレーヤーですが、むしろコンポーザーとして捉えた方が的確なのかもしれません。ジャズではアドリブが曲のニュアンスと無関係であったりする矛盾を必ず含む、ある意味自由な即興をベースにしていることに対して彼なりのアプローチを確立することに腐心した方であります。
曲目は...
Side 1
1. Pithecanthroptus Erectus
2. A Foggy Day
Side 2
1. Profile of Jackie
2. Love Chant
音楽性を模索する中で自身の作品を完全な表現に近づけるためにバンド(ワークショップ(ミンガス道場)と呼んだ方がいいのかもしれません)のメンバーをかなりユニークなアプローチで教育的に指導したそうです。作品が出来上がると譜面は使用せず彼がピアノを弾き(ピアノもかなり上手だったようです)メンバーに聴かせイメージをスケッチした紙を渡し曲のリン買う、解釈、フィーリングを説明し理解してもらう、使用するコードやスケールを教えた後、アンサンブル、ソロパートを実際にメンバーに演奏させる。当然、メンバーにはかなりの理解力が求められ、このミンガス道場を巣立ったプレーヤーはメジャーになった人ばかりのようです。
気性が激しくメンバーにも暴力を振るったエピソードなど事欠かせません。アルバムが発表された1956年、ハード・バップが主流であった時代にかなり前衛的な作品であったのは確かだと思います。
正直、聞いていて和む、癒されるといった類の作品ではありません。Side1の2曲目、ジョージ・ガーシュインの有名なスタンダード、A Foggy Day なども原型をとどめておらずテーマが遠くにようやく聞こえる程度... 最初はどう理解して良いのか驚きました。
なんか中学生の時に背伸びしてキングクリムゾンのアルバムを買った時の困惑が思い出されますが...
ようやく少し理解できたのはジャケットの裏にある彼自身の解説がありそれを拙い理解力で紐解くとなるほどと思わせる内容でありました。例えばA Foggy Dayはサブタイトルは"A Foggy Day in San Francisco"。彼自身、霧で有名なロンドンには行ったこともなく、この曲はサンフランシスコのフェリー乗り場に向かうまでの霧の深い日の車のクラクション、警報の音、酔いを引きずった翌朝の気だるさこれらを彼が感じたままに音楽的に表現していると語っています。なるほどそう言われると納得、そんな情景が浮かんでくるではないですか...
有名な"直立猿人"(Pithecanthropus Erectus)は現代人が猿から直立するまでの進化を音楽的に表現している。第1章から進化、優越感、衰退、滅亡... そこに最初に直立した人間が支配を目論むを挫折、滅亡するといった実は現代人に対しての隠喩的な警告がかったメッセージも感じられる大作なんだと思ったり、ジャングル雰囲気、猿人の咆哮がリアルに感じ取れます。
チャールズ・ミンガス、彼のプライドの高さ、気高さを伝えるエピソードとしてライブで音楽を聴いていない客に対して激昂し罵ったというエピソードが数あるありますが、やはり彼の音楽の本質、ちょっとやそっとでは理解できないのもわかる気がしますしライブをたまたま聞きに行った人はちょっと... ある程度の理解と情報がないと...
そういった意味でこのアルバム、初心者は要注意だと思います。また聞こうと思った時はちょっとした覚悟がいるかもしれません。今後ミンガスさんのレコードを収集するか?今のところはしばらくはいいかなぁと正直思っています。