レコードをめぐる冒険( 番外編)夏の終わりに聴きたいこの一曲 (Black Summer Rain/Eric Clapton)
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こんにちはYamataiです。
久しぶりのクラプトンを聞いたりしています。曲は夏の終わりに相応しい"Black Summer Rain"です。夏の終わりを示唆している曲ではないのですが夏の終わりになるとなんとなくどこからか聞こえるような気がします。
特にレコードに再び針を落とすことになった今年、このレコード"No Reason to Cry"も30年以上ぶりに聞いています。ジャッケットを見るとドラッグから脱しながらも代わりと言っていいのかわかりませんがアルコールにどっぷりはまった時代のクラプトンを象徴しています。バドワイザーからジムビームのかなり飲んだと思われる瓶が手前のテーブルには置かれています。控え室(写真の上部にある看板にShangliaとありますがロスアンゼルス郊外にあるShanglia Studioというスタジオのようです)で撮影されたようです。背後の鏡に少し疲れた丸い背中が映し出され...
アルバムはボブ・ディラン、ロビー・ロバートソン、ビリー・プレストン、ロン・ウッド、リックダンゴと豪華な参加メンバーと当時レギュラーでバックを務めるカール・レイドル、ジョージ・テリー、イヴォンヌ・エリマンらとセッション仕立ての100%リラックスしきったアルバムです。
正直このアルバム特段、シングルカットされたヒット曲もなく通常のスタジオアルバムに見られる真剣とは明らかにニュアンスが異なります、当時(中学生時代)内容はあまり好きでなかった記憶があります。しかしながら不思議と"Black Summer Rain"だけは耳について残っています。
曲目を紹介します:
Side A
1. Beautiful Thing
2. Carnival
3. Sign Language
4. County Jail
5. All Our Past Time
Side B
1. Hello Old Friend
2. Double Trouble
3. Innocent Time
4. Hungry
5. Black Summer Rain
A3のボブ・ディランの曲、ザ・バンドのメンバー、A1はリック・ダンゴ、リチャード・マニュエルの楽曲、B3はイヴォンヌがメインのヴォーカルInnocent Timeと意欲的な試みの見られながらもどこか呑気でリラックスしたクラプトン流カントリーロック的な雰囲気が全体に満ち溢れています。正直、当時はクラプトンでもクリームやデレク&ドミノーズあたりが好きだった私は困惑したものです。
クラプトンのおちゃらけぶりが見られる珍しいライナーノーツの写真であります。さすがにディランはこの時はいなかったんでしょうか写真の中に見当たりません。
このアルバムの翌年リリースされたのが商業的に大成功した"Slowhand"であることを考えるとレコード会社から次は頼むぞとかなり圧力をかけられたのかもしれないなどと勘ぐりたくなります。
さてさて今回の本題は"Black Summer Rain"ですがお馴染みのストラトキャスターの音色とロビー・ロバートソンのピッキング・ハーモニクス(ピックの先端で弾いて高音のピキーントした音です)がなんとも心にしみる名曲です。夏の終わりのメローな気分に浸りたい向きにはバッチリだと思うのですがいかがでしょうか?
歌詞として"黒い夏の雨"をどう解釈して良いのか?手がかりがあまりなく深読みするとかなり詩的なニュアンスを感じたりもしますが...
かつては陽も降り注いでいたけれど...
陽はどこに行ったのだろうか?
ただの記憶違いなのか?窓越しに輝き始めそうなその陽は過ぎ去って
(略)
愛はどこだろう?
自由になるための愛は?
鬱な気分.. どう抜け出せば良いのだろうか...
なんか暗い歌詞であります。この当時、パティ・ボイドとの念願の恋が成就した時期だと思われるのですがなんでこんな曲を作ったのか?いや昔、横恋慕している当時作った曲なのでしょうか... 決定的にわからないのがなぜ雨が黒いのか... 憂鬱な気分を示唆しているのか... ちょっと晴れない夏、今年の前半のような夏のような天気でリゾート地に来ていながら外にも出れない気分なのか(まさかですが...)。
ちょっと失望感すら残ったアルバムでしたが当時このアルバムは2500円、ソロ以降前作のThere's One Every Cloudまでは1500円で売り出されていたのでそれも少し恨めしく思った原因だったのかもしれません。
もう一点、アルバムタイトルの"No Reason to Cry”、このタイトルがかっこいいと思いてっきり楽曲もあるのだと勝手に信じていながらなかったことが???でした。
このアルバム、クラプトンファンの間でも評価の分かれるアルバムですが正直、今、アルバム全体を聞き流してみるとこれはこれでありだと思えてきます。不思議なものです。むしろこの後リリースされる"Slow Hand"や"Backless"の方がちょっと商業的なクラプトンが造成しはじめられたのだと感じてしまうから不思議であります。
さらに凝視するとクリーム以降のクラプトンが憧憬し目指したアメリカ南部の世界のある意味で集大成的なアルバムなのだと解釈できるような気がします。セッション的なノリの延長で作られたと思わせながら実はそうではなかったり... クラプトンがそこまで戦略的とは思えませんが時が過ぎた今、俯瞰してみるとこのアルバムが意外や重要なターニングポイントである気がしてなりません。
いやいや前言撤回、30年越しに好きになりました。同窓会で昔は全く疎遠だった実はものすごく魅力的な人に会ってしまったみたいな痛痒い気分ですかね。