"騎士団長を殺し"感想文
こんにちは!
"騎士団長殺し"昨日、読み終えました。
第1部はの200ページくらいまでは睡魔との戦いでした。
もう長編小説は読めないのかと危惧していました。
しかし15章の"これはただの始まりにすぎない" あたりからピッチが上がり、それはかつてのランス・アームストロングがラルプ・デュエズを常軌を逸するギア比に対するケイデンスで集団から瞬く間に抜け出しゴールまで独走するような異様な光景だったかもしれません。
少し意外であったのは1部、2部の構成でおそらくは3部に続くような2部の終わり方を予想しましたがそうではなかったことです。
ある種、平凡な映画のエンディングのような主要人物が落ち着くところに落ち着いた的なエンディングが今までの村上作品とは違う気がしましたが...
先鋭的な部分が良い意味で削がれてきているのかなぁと...
また村上作品、ある意味もはや変わらないのだと... 当然細かい部分、時代的な要素も盛り込まれますが(トヨタ・プリウス、スバル・フォレスター、電話で写真を撮る等の表現)基本は、変わらない首尾一貫したストーリー展開がみてとれます。
不器用で偏屈な(世間から見ての)主人公が大事なものを喪失する(それはほとんどの場合妻であり、恋人)、そして、そこからの内省するプロセスにおいてメンター(古くは羊男、今回は騎士団長)が登場、またある種、主人公とは対照的な世界に属するキャラクター(かつての五反田君、今回の免色氏)なども登場しながらストーリーが展開する。
おおよその展開、ストーリー仕立てはもはや変わらないのであろう。
おそらくは意図的に変えていない。
これは良い悪いではなく、ある意味でこれが安心して読める要素ではないかと個人的には思えます。
ある意味で寅さんシリーズがそうであるように村上作品の主人公の役回りは変わらず、決して熟成、達観することなく大切な人の心の機微を汲めず喪失する、そこから物語は始まる。
喪失... これがある意味で村上作品の永遠のテーマであると言えます。
このテーマに符合するメッセージも暗に含まれているのかもしれませんが...
それらは読者に委ねられている...
ワンパターンであるとか進化が見られないなど否定的な評価も散見される村上作品ですがこれほどまでに一気に読ませ惹きつける魅力は個人的にはすごいと思いますが...
どうでしょう...
結論として"騎士団長殺し"お勧めしますが時間がない人は急いで読まなくても良いかもしれない気が... 読書は1日、30分と決めて読める人であればOKですが私みたいに節制できない人は気をつけたほうが良いですよー